狩猟車のスタック対策|ぬかるみ・脱輪からの脱出方法と車載装備
4WDを過信せず、まず悪化させない。実猟で役立つリカバリーの基本
狩猟中のぬかるみ・脱輪・対角スタックへの対処を、実体験と公的・信頼できる資料をもとに解説。アクセル操作、ラダー、ジャッキ、牽引ロープなど車載装備も整理します。
狩猟車はスタックする
狩猟では、農道、林道、河川敷、田畑の脇など、普通のドライブではあまり入らない場所を車で走ることがあります。
そこで起こるのが、ぬかるみで動けなくなる、側溝へタイヤを落とす、路肩が崩れて脱輪するといったスタックです。
4WDだから大丈夫、というわけでもありません。
私自身、狩猟中に側溝への脱輪やぬかるみなど、いろいろなスタックを経験してきました。
この記事では、細かな4WD機構の話よりも、実際にスタックしたときに何を見るか、どう悪化を防ぐか、何を車へ積んでおくかに絞って整理します。
まず、アクセルを踏み続けない
車が動かなくなったときに最初にやってはいけないのが、とにかくアクセルを踏んで脱出しようとすることです。
タイヤが空転している状態でアクセルを踏み続けると、泥や柔らかい土を掘ってしまい、タイヤがさらに沈みます。
JAFも、ぬかるみから脱出するときはアクセルをゆっくり操作し、小刻みに前進・後退を繰り返すよう案内しています。
まず車を止めて、どのタイヤが空転しているか、車体の腹が地面についていないか、タイヤが側溝や穴へ落ちていないか、前後どちらなら動かせそうかを外から確認します。
スタックリカバリーは、動かす前に「何が車を止めているのか」を見極めることが重要です。
ぬかるみでは「掘らない・接地を取り戻す」
泥道でタイヤが空転しているなら、必要なのは大きなパワーではありません。タイヤが地面を押せる状態を作ることです。
まずタイヤ前方や腹下に溜まった泥をシャベルで取り除きます。
そのうえで、スタックラダー、土を入れた土のう袋、砂や砂利などをタイヤの下へ入れ、タイヤが乗り上がれる足場を作ります。
国土交通省の道路管理資料でも、スタック時には緊急脱出用プレートなどをタイヤ下へ敷き、ゆっくり発進する方法が案内されています。
アクセルはゆっくり。勢いで突破しようとすると、ラダーを弾き飛ばしたり、再びタイヤを掘らせたりします。
可能なら前後に少しずつ動かす
完全に埋まっていなければ、前進と後退を少しずつ繰り返し、車が動ける幅を広げることで脱出できる場合があります。
いわゆる振り子のような動かし方です。
車種によってはトラクションコントロールを一時的にOFFにしたり、スノーモードなどを使うことで脱出しやすくなる場合もありますが、制御は車ごとに違います。
自分の車の取扱説明書で、スタック時の操作を一度確認しておくと安心です。
側溝へ脱輪したら、無理に登らせない
狩猟で意外と怖いのが側溝です。農道や林道では、落ち葉や草でU字溝が見えなくなっていることがあります。
片輪を深い側溝へ落とすと、タイヤが浮く、車体下部が地面へ接触する、対角側のタイヤの荷重まで抜ける、といった状態になることがあります。
こうなると、アクセルだけで登ろうとしても難しい場合があります。
私自身の脱輪でも、車体そのものが接地してしまったケースでは、まず車体を持ち上げてタイヤへ荷重を戻す必要がありました。
浅い脱輪で車体が接触していなければ、タイヤの進行方向へラダーや土のうなどで斜面を作り、ゆっくり登らせる方法があります。
ただし、深い脱輪や大きく傾いた状態では、無理に自走させない方が安全です。
ジャッキは「持っているだけ」では足りない
脱輪ではジャッキが非常に役立ちます。
ただし、農道や林道は舗装路と違って地面が柔らかいため、パンタジャッキをそのまま置くと地面へ沈み込むことがあります。
私はそのため、ジャッキと、ジャッキの下へ敷く厚い板や鉄板をセットで車へ積んでいます。
また、車が大きく傾いている状態でのジャッキ作業は危険です。地面が安定しない、車体が滑りそう、持ち上げた状態を保持できない、といった場合は無理に作業しません。
ジャッキで持ち上げた車体の下へ入らないことも大前提です。
4WDでもスタックする
「狩猟車なら4WD」と考える人は多いと思います。もちろん悪路では有利ですが、4WDだから絶対にスタックしないわけではありません。
一般的な車には左右の回転差を吸収するデフがあり、タイヤの接地状態によっては、一部のタイヤが空転して他のタイヤへ十分な駆動力を伝えられないことがあります。
そのため、4WDでも脱輪や対角線状にタイヤの荷重が抜けると動けなくなることがあります。これは私自身も実際に経験しています。
重要なのは「4WDだから行ける」ではなく、どのタイヤが地面を押しているかを見ることです。
牽引は最後の選択肢
自力で出られなければ、他車に引いてもらう方法があります。そのため、狩猟車には牽引ロープを積んでおくと選択肢が増えます。
ただし牽引は、適当な場所にロープを掛ければいいわけではありません。
JAFは、車両重量に対応した専用の牽引ロープを使い、車両の取扱説明書で指定された牽引用フックへ取り付けるよう案内しています。また、急発進ではなくゆっくり力をかけることが重要です。
車種によっては緊急用フックの用途が限定されており、「自車を引き出してもらうため」のフックを他車の牽引に使えない場合もあります。
自分の車のフックが何に使えるのか、一度取扱説明書を確認しておくことをおすすめします。
狩猟車に積んでおきたいスタック装備
私が実際に積んでいる基本セットは、かなり単純です。
特にシャベル、ラダー、ジャッキの敷板は、単独でも組み合わせても使えます。
土のう袋も地味ですが便利です。現場の土を詰めれば、脱輪したタイヤの足場や、空転して掘ってしまった穴を埋める材料にできます。
- パンタジャッキ
- ジャッキ用の板または鉄板
- ハードタイプのスタックラダー
- 土のう袋
- 折りたたみシャベル
- 作業用手袋
- 車両に対応した牽引ロープ
一番大切なのは「悪化させないこと」
スタックすると、「もう少しアクセルを踏めば出そう」と思ってしまいます。
しかし、タイヤが掘る、車体が沈む、傾きが大きくなる、と状況が一段悪化すると、さっきまで簡単だった脱出が急に難しくなります。
だから私は、止まる、見る、原因を考える、足場を作る、ゆっくり動かす、という順番を基本にしています。
それでも難しいなら、自力脱出にこだわらずロードサービスを呼びます。
狩猟では人がほとんど通らない場所へ入ることもあります。4WDを過信するより、スタックしたときに使える道具を積み、車がなぜ動かなくなったのかを判断できることの方が重要です。
さらに詳しく知りたい方へ
この記事では、現場で使う考え方を中心に整理しました。
4WD、デフ、LSDなど「なぜ車がスタックするのか」という構造から詳しく知りたい方は前編で解説しています。
実際の脱輪、ぬかるみ、対角スタックと、私が積んでいるリカバリー用品については後編で詳しく紹介しています。