エアライフル用スコープマウントの選び方
高さ・リング径・取り付け方の基本
PCPエアライフル用スコープマウントの選び方を初心者向けに解説します。Picatinnyと11mmドブテイル、30mmなどのリング径、ライフルとブルパップでの高さの考え方、サイトハイトと弾道、締付トルクやラッピングまで整理します。
スコープマウントは意外と迷いやすい
ライフルスコープを選んだあと、意外と迷うのがスコープマウントです。
リング径は何mmなのか。Low、Medium、Highのどれを選ぶのか。スコープはできるだけ低く付けた方がいいのか。ネジにはロックタイトを使うのか。リングはラッピングした方がいいのか。
このあたりは、射撃の世界でもかなり流儀が分かれる部分です。
さらに、装薬ライフル、PCPエアライフル、スプリング式エアライフルでは、マウントに求められる条件も同じではありません。
この記事では「この取り付け方だけが正解」とはせず、狩猟用PCPエアライフルを中心に、初心者がスコープマウントを選ぶための基準を整理します。
まず確認するのは銃側のレール規格
現在のPCPエアライフルでは、20mm系のPicatinnyレールが一般的になっています。
ただし、表記には少し注意が必要です。
特にチェコ製のPCPでは、Weaver、Weaver / Picatinny、Picatinnyなどと表記されることがあります。
実際のリング選びではPicatinny用リングを使用するケースが多いですが、本来WeaverとPicatinnyは同一規格ではありません。
一方、現在でも11mm前後のドブテイルを採用するエアライフルもあります。
最初に、自分の銃が20mm系レールなのか、11mm系ドブテイルなのかを確認しましょう。
次にスコープのチューブ径を見る
リングはスコープ本体のチューブ径に合わせます。
よく使われるのは1インチ、30mm、34mmです。
たとえば30mmチューブのスコープには30mmリングを使います。
つまり最初に確認するのは、銃側のレール規格とスコープ側のチューブ径の2つです。
一番迷うのはリングの高さ
初心者が一番困るのが、Low、Medium、Highのどれを買えばいいのか、というところだと思います。
本来は、銃の形、チークピースの高さ、スコープの対物径、マガジンの位置、射手の体格などを見て決めます。
とはいえ「実際に構えて決めてください」だけでは、初めて買う人は選べません。
そこで、まずは銃の形から考えると分かりやすくなります。
ライフルタイプならMediumあたりから
一般的なライフル形状では、ストックのチークピースへ頬を乗せ、その少し上に目線が来ます。
そのためブルパップよりスコープを低く取り付けやすく、まずMedium程度から考えるのがひとつの目安です。
たとえばElement OpticsのAccu-Lite 30mmリングでは、メーカー表記の高さがLow 22mm、Medium 25mm、High 29mm、Extra High 35mmとなっています。
この数字は業界共通ではありませんが、高さの感覚をつかむ具体例としては分かりやすいでしょう。
ライフルタイプなら、25mm前後のMediumクラスから考えると大きく外しにくいと思います。
ブルパップはHighを基準に考えやすい
ブルパップでは事情が変わります。
一般的なライフルではストックへ頬を乗せますが、ブルパップでは構造上、機関部の上あたりへ頬を乗せる形になります。
そのため、顔の位置そのものが高くなります。
ライフルタイプと同じ感覚で低いリングを付けると、頬を強く押し下げたり、首を傾けたりしないとスコープを覗けないことがあります。
ブルパップでは、まずHigh、30mm前後のクラスから考えると選びやすいでしょう。
さらに機関部やチークピースが高い銃では、Extra Highやライザーが必要になる場合もあります。
これは絶対の高さではなく、最初に選ぶときの目安です。最終的には自然に構えたときの目線とスコープの高さが合うことを優先します。
Low・Medium・Highという名前だけで選ばない
Low、Medium、Highにはメーカー共通の高さ基準がありません。
同じHighでもメーカーによって高さは違います。
さらにHEIGHTがどこからどこまでを測った数字なのかも、メーカーによって表記方法が違うことがあります。
そのため、メーカーが実寸を公開しているなら、Low、Medium、Highという名前より、実際の寸法を確認する方が確実です。
実寸が分からない場合の出発点として、ライフルタイプならMediumから、ブルパップならHighから、と考えるくらいが初心者には分かりやすいでしょう。
対物レンズやマガジンとの干渉も確認する
リング高は、頬付けだけで決めるものではありません。
スコープの対物ベルが銃身やレールへ当たらないことも必要です。
またPCPでは、マガジンがレシーバー上へ張り出し、スコープ中央部と干渉することがあります。
「50mmスコープ」と書いてあっても、50mmはレンズ径であり、対物ベルの外径そのものではありません。
対物レンズ、マガジン、レール、機関部を含めて十分なクリアランスがあるかを確認します。
スコープは低ければ低いほどいい?
装薬ライフルの世界では、「スコープは可能な限り低く付ける」という考え方をよく見かけます。
確かに低くするメリットはあります。
スコープ中心と銃身軸との距離が短くなるので、銃を左右へ傾けたときのカントエラーを小さくしやすくなります。
またスコープという比較的重い部品が低くなるので、銃全体の重心も低くできます。
ただし、PCPエアライフルでは、低ければ低いほど実用的とは限りません。
エアライフルではサイトハイトが弾道の見え方に効く
銃身中心からスコープ中心までの高さを、サイトハイトと呼びます。
弾は発射後、重力によって落下していきます。一方、スコープの照準線は直線です。
ゼロインでは、この弾道と照準線の位置関係を合わせます。そのためスコープ越しには、弾が一度照準線より上へ出て、その後また下へ落ちていくように見えることがあります。
ここで重要なのは、スコープを高くしても弾そのものの弾道がフラットになるわけではない、ということです。
変わるのは、弾道と照準線の位置関係です。
サイトハイトを5.5cm・6.5cm・7.5cmで比べてみる
具体例を見てみます。
条件は、5.5mm JSB Jumbo Heavy 18.1gr、初速886fps、BC 0.035、50mゼロとし、サイトハイトだけを5.5cm、6.5cm、7.5cmへ変更しました。
ここでいう5.5cm、6.5cm、7.5cmはリング単体の高さではなく、銃身中心からスコープ中心までのサイトハイトです。
下の数字はAbsolute Drop(絶対落下量)ではありません。スコープの照準線に対して着弾がどれだけ上または下にあるかを示すVertical Correctionの値です。
Absolute Dropは弾そのものが発射軸からどれだけ落下したかを示す値で、この比較ではサイトハイトを変えても同じです。たとえば30mでのAbsolute Dropは3条件とも約6.6cmです。
| 距離 | サイトハイト5.5cm | 6.5cm | 7.5cm |
|---|---|---|---|
| 5m | 3.07cm 下 | 3.95cm 下 | 4.83cm 下 |
| 30m | 2.85cm 上 | 2.45cm 上 | 2.05cm 上 |
| 35m | 2.83cm 上 | 2.53cm 上 | 2.23cm 上 |
| 40m | 2.34cm 上 | 2.14cm 上 | 1.94cm 上 |
| 50m | 0 | 0 | 0 |
この条件では、サイトハイトを5.5cmから7.5cmへ2cm高くすると、30mで照準線より上へ出る量は2.85cmから2.05cmへ減りました。差は約8mmです。
最大の見かけ上のリフトも、およそ2.85cmから2.23cmへ小さくなっています。
つまり、Absolute Dropそのものが減ったのではなく、照準線との位置関係が変わったことで、30〜40m付近のスコープ上の上下差が小さくなっています。
その代わり近距離では不利になる
高いリングには弾道上のメリットだけがあるわけではありません。
同じ比較を見ると、5mではサイトハイト5.5cmで約3.07cm下、7.5cmでは約4.83cm下となります。
つまりサイトハイトを高くすると、ゼロ距離よりかなり近い場所では、銃身と照準線の高さの差が大きく現れます。
30〜40m付近の見かけ上のリフトは抑えやすくなる一方、5〜15mの近距離ではホールドオーバーが大きくなる。これもトレードオフです。
狩猟用PCPでは少し高めも実用的
この性質を考えると、狩猟用PCPでは「対物レンズが当たらない最低限の高さ」だけを基準にリングを選ぶ必要はありません。
自然に覗けることを前提に、少し高めにすることで、30〜40m付近の照準線に対する上下差を扱いやすくできる場合があります。
特にブルパップでは、もともと高いスコープ位置が必要になるため、弾道上もその高さをうまく利用できます。
ただし、高いほど良いという話ではありません。
高くするとカントと重心では不利になる
スコープを高くすると、銃身軸からスコープ中心が離れるため、銃を傾けたときのカントの影響は大きくなります。
さらにスコープの重量が高い位置へ移動するため、銃全体の重心も高くなります。
ベンチレストなら問題になりにくくても、立射や膝射など自分の身体で銃を支える狩猟では、重心が高いほど据銃安定性には不利になります。
つまり狩猟用PCPでは、自然な頬付け、弾道、カント、重心、そして見た目のバランスで高さを決めるのが現実的です。
PCPと装薬ライフルでは条件が違う
スコープマウントの記事を調べると、多くは装薬ライフル向けです。
装薬ライフルでは大きな反動があるため、マウントを強固に固定し、リコイルによるズレを防ぐことが重要になります。
一方、PCPエアライフルには一般的な装薬ライフルのような大きな発射反動はありません。
そのため、装薬ライフル向けの取り付け方法を、そのまますべてPCPへ持ち込む必要があるとは限りません。
ただし狩猟では車で運搬し、山野を歩き、銃へ衝撃が加わることもあります。「反動が少ない=適当に取り付けていい」という意味ではありません。
スプリング式エアライフルはまた別
同じエアライフルでも、スプリングピストン式はPCPとは別に考えます。
スプリングやピストンによる独特の前後方向の衝撃があるため、リングやスコープへPCPとは違う負荷が掛かります。
スプリング式では、ストップピンや対応マウントが必要になる場合もあります。
取り付け方法にはかなり流儀がある
ここからはスコープマウントの「宗教」が出てくる部分です。
たとえば、「必ずロックタイトを使う」「絶対使わない」「リングは必ずラッピングする」「精密リングはラッピングしてはいけない」など、まったく逆の話が出てきます。
これは、リングごとに構造とメーカー指定が違うことが大きな理由です。
ラッピングも必須ではない
リングのラッピングは、リング内面を研磨してスコープとの接触を整える作業です。
有効なリングもあります。
一方でWarneは、縦割りのMaximaリングについては構造上ラッピングを推奨していません。リングがスコープチューブへ沿って変形しながら締結する設計のため、ラッピングで内面形状を変えるとかえって適切な接触を損なう可能性があると説明しています。
つまり、「正しく取り付けるなら必ずラッピング」ではありません。
ロックタイトや油も一律ではない
ねじについても同じです。
Warneはリングキャップについて、乾いたねじを前提としたトルク値を使い、スレッドロッカーを使用しないよう案内しています。液体による潤滑で、同じトルクでも締結力が変わるためです。
LeupoldのQuick Releaseリングでは、Nylokを採用しているため追加のLoctiteは不要で、ねじへ油も付けないよう指定しています。
一方、American Rifle CompanyのM-BRACEでは、ねじへ少量のオイルまたはアンチシーズを使い、Loctiteは推奨しないという指定です。
同じスコープリングでも、メーカー指定はここまで違います。
だから、「絶対に脱脂」「必ずロックタイト」という一律のルールにはせず、使用する製品のメーカー指定を優先します。
締付トルクもメーカー指定を見る
締付トルクも共通ではありません。
たとえばElement OpticsのAccu-Liteではリング側の最大締付トルクが25in-lb(2.8N·m)です。一方、American Rifle CompanyのM-BRACEでは、構造上55in-lb(6.2N·m)が指定されています。
数字だけ見れば倍以上違いますが、ねじ径やリング構造そのものが違います。
つまり、「スコープリングなら○N·m」という共通値を覚えるのではなく、使用するリングとスコープメーカーの指定を確認するのが基本です。
海外製品ではin-lb、手元のトルクレンチではN·mというように、単位が違うこともあります。
こうした射撃関係の単位換算には、38TUNESで作ったWebアプリ38Q(Quick Shooting Converter)のトルク換算も使えます。
初めて選ぶなら、まずここから
最初の1セットなら、Picatinnyか11mmかを確認する、スコープのチューブ径を確認する、ライフル型ならMedium、ブルパップならHighをひとつの出発点にする、実寸が分かるなら実寸を優先する、銃やマガジンへの干渉と自然に覗けるかを確認する、という順番で考えると分かりやすいでしょう。
そこから、実際に使う距離での弾道まで考えて高さを調整します。
狩猟用PCPでは、スコープを極端に低くすることだけが正解ではありません。
少し高くても自然に構えられ、狩猟距離で照準線に対する上下差を扱いやすい高さを選ぶ。その代わり、高くした分だけ近距離補正、カント、重心には不利になります。
そして取り付け方法については、ネット上の「絶対こうする」という流儀より、使っているリングとスコープのメーカー指定を優先する。これが一番失敗しにくい考え方です。