エアライフルでイノシシ・シカは獲れる?
「最強威力」だけで選ばないために
高出力のエアライフルならイノシシやシカにも使えるのでしょうか。出力と精度の違い、装薬銃とのエネルギー比較、止めさしと狩猟の違いを整理し、今の用途と練習を優先する銃選びを解説します。
まず知っておきたいこと
「威力の大きなエアライフルなら、鳥だけでなくイノシシやシカにも使えるのでは?」
初めてのエアライフルを選ぶとき、こう考える方もいるでしょう。せっかく購入するなら、幅広い用途に使える銃が欲しくなるものです。
結論からいうと、エアライフルが大型獣の捕獲に使われる場面はあります。しかし、高出力であることと、その用途に適していることは同じではありません。
出力だけでなく、精度、扱いやすさ、使用条件まで含めて考える必要があります。特に初心者の銃選びでは、「いつか使うかもしれない用途」より、今取り組む猟と練習のしやすさを優先したいところです。
出力と精度は比例しない
まず知っておきたいのは、出力が大きくなれば、精度も高くなるわけではないということです。
高出力を優先したモデルや使用条件では、ほかのエアライフルで期待するようなグルーピング、つまり着弾のまとまりが得られないこともあります。
カタログに大きな出力が記載されていても、それだけでは、実際にどの程度まとまって当たる銃なのかは分かりません。
また、最大出力は特定の弾や測定条件による数値です。普段使う弾で、その数字と十分な精度を両立できるとは限りません。
最大出力と、実用上の命中精度は別々に確認するものです。威力の数字だけで銃の性能を判断しないことが大切です。
高出力の空気銃でも、装薬銃とは出力の規模が違う
「空気銃の中で高出力」という説明から、大型獣猟に使う装薬銃と同じように使えると考えるのは適切ではありません。
具体例として、散弾銃用のスラッグ弾と、高出力エアライフルの銃口エネルギーを比較してみます。
| 種類 | 銃口エネルギー | 空気銃例との比較 |
|---|---|---|
| 12GA・スラッグ弾 | 約2,520 ft-lb | 約12.9倍 |
| 20GA・スラッグ弾 | 約1,865 ft-lb | 約9.5倍 |
| .410番・スラッグ弾 | 約760 ft-lb | 約3.9倍 |
| 7.62mm高出力エアライフルの一例 | 約196 ft-lb | 1倍 |
※装薬銃側は市販スラッグ弾のメーカー公表値、空気銃側はあるモデルの公称値です。各区分の平均値や最大値ではなく、出力差を理解するための具体例です。ft-lbはエネルギーの単位です。
この例では、高出力エアライフルでも、12GAスラッグ弾の約13分の1のエネルギーです。
もちろん、この比率がそのまま捕獲能力の差になるわけではありません。「ハイパワー」という言葉だけでは、何と比べてどれほどの出力なのか分からないという点を押さえてください。
止めさしと、自由に動く獣を対象とする猟は違う
エアライフルは、わなにかかった獣の止めさしに使われることがあります。
ただし、わなで捕獲した獣への対応と、自由に動くイノシシやシカを対象とする銃猟では、条件が異なります。
止めさしでの使用実績があるからといって、通常の大型獣猟にも適しているとは限りません。また、わなにかかっているから簡単、安全ということでもありません。
銃の性能だけでなく、経験、安全を確保できる環境、捕獲の許可条件まで含めて判断する必要があります。
使用できるかどうかは、許可条件も確認する
通常の狩猟と、有害鳥獣捕獲の許可に基づく捕獲は、制度を分けて考える必要があります。
例えば、つくばみらい市の有害鳥獣捕獲の許可基準では、大型獣類への空気銃使用を原則として認めず、取り逃がす危険性のない状況について例外を設けています。
これは、その自治体の有害鳥獣捕獲に関する基準です。全国一律の狩猟ルールとして読み替えることはできません。
具体的な用途がある場合は、購入前に、所持許可については管轄警察署へ、捕獲の条件については自治体の鳥獣行政担当窓口へ確認しましょう。
口径は「今やっていること」を基準に選ぶ
用途を整理する出発点として、38TUNESでは次のように考えています。
- 鳥猟を中心に始めるなら、5.5mm
- 鳥猟と止めさしを実際に兼ねるなら、6.35mmも検討
- 止めさし専用の用途があるなら、7.62mmも検討
これは口径選びの目安であり、その口径なら必ず適しているという意味ではありません。実際には銃の特性や使用条件も含めて判断します。
ここで大切なのは、「いつか、わな猟もやるかもしれない」という理由だけで、6.35mmや7.62mmを選ばないことです。
すでに止めさしに従事している場合と、漠然と将来の可能性を考えている場合では、必要な道具は変わります。
今の目的が鳥猟なら、まずはその用途で使いやすい銃を選ぶことを勧めます。
初心者には、十分に練習できることの価値が大きい
鳥猟から始める初心者にとって、5.5mmは弾の選択肢や費用の面で検討しやすい口径です。
弾代などの負担を抑えられれば、その分、射撃練習を続けやすくなります。銃の購入だけで予算を使い切らず、射撃場へ通う費用も残しておきたいところです。
自分の銃を安全に扱うこと。着弾のまとまりを把握すること。自分にできることと、まだできないことを理解すること。
こうした経験は、出力の大きい銃を購入するだけでは身につきません。
将来の用途を先取りして威力を求めるより、まずは今の道具を使いこなす腕を磨く。初めての1挺では、その順番を大切にしたいと考えています。
必要以上の威力を、軽く考えない
「威力は大きいほど余裕があって安心」とは限りません。
発射した弾に対する責任は、すべて射手が負います。誤射や跳弾などによる事故は、自分だけでなく、周囲の人の命を奪うおそれもあります。
用途に対して必要以上の出力を選ぶなら、その性能に伴う危険も、自分で理解し管理しなければなりません。もちろん、5.5mmなら安全ということでもありません。
オーバーパワーを、単なるスペック上の余裕として考えてはいけません。
高出力を求める前に、その出力が本当に必要なのか、自分が責任を持って扱えるのかを考える必要があります。
結論:威力より先に、用途と精度と練習
エアライフルでイノシシやシカを捕獲できる場面があることと、初心者がその目的で高出力の銃を選ぶべきかどうかは、別の話です。
出力と精度は比例せず、大口径にすれば用途が無条件に広がるわけでもありません。
今は鳥猟を始めたいのであれば、まずは5.5mmを軸に、扱いやすさと練習の続けやすさを考える。止めさしなどの具体的な用途が生まれたときに、改めて必要な道具を検討する。
「いつかのための威力」より、「今の用途に合う銃と、それを扱う技量」。それが、無理のないエアライフル選びにつながります。
この記事のもとになった詳しい考察は、noteに掲載しています。